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乗り直し・車種選びガイド

リターンライダーが最初に買ってはいけないバイク
――20年前の体力感覚が招く失敗

「あの頃のように走れるはず」——乗り直しを考えるとき、頭に浮かぶのはたいてい20年前に憧れた一台の記憶です。ただ、記憶の中の自分といまの自分は同じではありません。体力と感覚の変化、そしてバイク側の進化を踏まえて、最初の一台として避けたい4つの傾向と、現実的な乗り直しの入口を整理します。特定の車種・メーカーを評価する記事ではありません。


ヘルメットとグローブをシートに載せた、赤いタンクの軽量スタンダードバイクの線画

なぜ「昔憧れたあの一台」から入ると危ないのか

免許を取ってから10年、20年。仕事や家庭に時間を取られるうちに愛車は手放され、二輪免許だけが手元に残った——そんな人が、子育ての一段落や時間の余裕をきっかけに、再びバイクのことを考え始めます。そのとき最初に浮かぶのは、たいてい当時憧れていた一台です。手が届かなかった、先輩や雑誌の中でしか見たことのなかった存在。乗り直すならあの一台に、という気持ちは自然なものです。

ただ、その気持ちだけで選ぶと、体力とバイクの両方の変化を見落とします。体の面では、瞬発的な筋力、バランスを取り戻す反射、長時間の姿勢維持がゆるやかに変わっています。20代の頃に無意識にできていた信号待ちでの踏ん張りや低速でのふらつきの制御は、ブランクの間に他の運動で維持していない限り、同じようには戻らないことが多いものです。これは加齢そのものというより、単純に「その動きをしていなかった時間」の長さの問題と考えるほうが実態に近いでしょう。

一方でバイクの側も止まっていません。エンジン特性、車体の電子制御、ブレーキの効きは、20年前とは設計思想から違います。同じ排気量だから同じ感覚だろう、という前提はいまのモデルには通用しにくくなっています。記憶の中の一台といま店頭に並ぶ一台は、系統が近くても中身は別の乗り物になっていることがあります。

もう一つ見落とされがちなのが、速度感覚や車間の読み方といった、走りながら判断する力です。頭では覚えているつもりの合流のタイミングや停止距離の見積もりが、実際にハンドルを握ってみると思ったほどすんなり出てこないことがあります。こうした感覚は、いきなり負荷の高い一台に乗ってから取り戻すより、余裕のある一台で走りながら少しずつ戻していくほうが無理がありません。

買ってはいけない4つのタイプ

乗り直しの一台として避けたほうがよい傾向は、おおむね4つに整理できます。特定の車種を否定する話ではなく、体力とブランクの現実に対して負荷が大きくなりやすい「方向性」の話です。

  • いきなりの大排気量スーパースポーツ:強い前傾姿勢を長く保つ体幹と、瞬時に立ち上がるパワーを御する反射の両方が要求されます。あの頃の反応速度を前提に選ぶと、想定とのズレが大きく出やすい領域です。
  • 200kgを超える重量級:取り回しや引き起こしの負荷は、車重と重心の高さでほぼ決まります。エンジンのかかっていない状態で押し引きする瞬間、万一横に倒れたときに一人で起こせるかどうか。乗り出す前に想像しておきたい部分です。
  • 足つきの悪い、車高の高い一台:信号待ちや低速での安心感は、足つきの良し悪しに大きく左右されます。ブランク明けで低速バランスが戻りきっていない時期に、つま先立ちを強いられる車高は不安を増幅させやすいものです。
  • 整備前提の旧車:機械としての魅力は理解できますが、乗り直しと並行して整備の知識・工具・付き合いのある店を揃える負荷は軽くありません。まず乗ることに集中したい時期には、重なる負担が大きくなりがちです。

4つに共通しているのは、車両そのものの良し悪しではなく、「いまの自分の感覚」と「その一台が要求してくる負荷」のあいだにどれだけ距離があるか、という視点です。同じタイプでも、車種によって前傾の強さや車重は違います。方向性を押さえたうえで、最終的には試乗して自分の体で確かめるのが、遠回りのようでいちばん確実です。

体の現実と、機械の進化

二輪の新車購入者の年齢層は上がっており、平均年齢が50代半ばに達したと日本自動車工業会の市場動向調査で報じられています。リターンライダーは、いまの二輪市場の中心的な顧客層の一角になっているということでもあります。

機械の側にも、その世代を後押しする変化があります。国内では2018年10月以降に発売された新型車(126cc以上の区分)にABSの装着が義務づけられ、継続生産車も2021年10月以降は対象になりました。急制動時の車輪ロックを電子的に抑える仕組みが、いまでは新車のかなりの範囲で標準になっています(125cc以下の区分は、前後連動ブレーキ=CBSでも可とされています)。警察や二輪の安全団体が中高年のリターンライダーに向けた事故防止の呼びかけを続けているのも、この年代の乗り直しがそれだけ増えていることの裏返しでしょう。

つまり、乗り直す側の体は20年分ゆっくり変わっていますが、迎える側の車両は安全面で以前より頼りになる方向に進んでいます。この噛み合わせを活かせるかどうかは、結局のところ最初にどんな一台を選ぶかにかかっています。

現役ライダーの解説動画 【永遠の課題】失敗しないバイクの選び方と注意点! バイク系チャンネル「Woka Rider」の一本。リターンライダー向けに限らず、バイク選び全般の失敗回避を扱う動画で、タイトルと概要欄で内容を確認して選びました。選定は編集部の独立した判断で、紹介先との広告・金銭関係はありません。(YouTubeで開きます)

では、何から乗り直すか

乗り直しの一台に求めたいのは、憧れよりもまず軽さと素直さです。車重が軽く、足つきが良く、アクセルやブレーキの反応が穏やかなクラス——教習車に近い性格の一台から始めるという考え方は、遠回りに見えて近道になりやすいものです。排気量ごとの維持費やスペックの違いは250ccと400ccの比較で整理しているので、クラス選びの目安にしてください。感覚が戻ってから、乗り換えでステップアップする道はいつでも開いています。

いきなり車両を所有しなくても、感覚を取り戻す方法はあります。レンタルバイクを扱う店は増えており、複数のクラス・車種を乗り比べてから購入を検討できます。教習所が実施しているペーパーライダー向けの講習も選択肢の一つで、指導員の付き添いのもとで低速バランスや取り回しを確認し直せます。焦って一台を決める前にこうした場で自分のいまの感覚を確かめておくと、選び直しの精度が上がります。乗り出す前の日常点検の手順は走る前の5分確認にまとめています。

ガレージで眠っているあの頃の愛車をどうするか

ブランクの間、当時の一台をそのままガレージや物置に置いている人も少なくありません。動かさないまま年数だけが経っていると、いざ動かそうとしたときにバッテリーや燃料系のトラブルに直面することもあります。再整備して乗るか、手放して次の一台の資金に充てるかは、車体の状態と自分がかけられる手間を照らし合わせて決めることになります。

長く動かしていない旧車や大型車ほど、状態の見立てには専門的な目が要ります。乗り直しの入口として軽いクラスを検討しているなら、いまの愛車を査定に出し、その結果を見てから次の一台を考えるという順番も現実的な選択肢の一つです。手放すと決めたときの値付けの読み方は中古相場の読み方にまとめています。

結び――「降りない」ための選び方

最初の一台選びの目的は、格好よく乗り始めることより、乗り続けることにあります。あの頃憧れていた一台への気持ちは大切にしていい。ただし、それを最初の一台にするかどうかは別の判断でいいはずです。軽さ、足つき、素直な特性を優先して感覚を取り戻し、それから憧れの一台に近づいていく——その順番のほうが、結果として長く乗り続けられる道になりやすいと考えています。降りずに、次の休日も走りに出られること。乗り直しの選び方は、そこに向けて考えたいところです。

車種選びは最新情報の確認を

本記事は避けたい「傾向」を整理したもので、特定の車種・メーカーの評価ではありません。ABS義務化などの法規・制度は参照時点の情報です。購入・売却の判断は、販売店での試乗・見積もりと公式情報の確認の上で行ってください。

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