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業界コラム

ライダーの平均年齢は上がっているのか
高齢化の背景と、バイク業界のこれからを考える

バイク雑誌やニュースサイトでは「ライダーの平均年齢が50代半ばに達した」という数字がたびたび引用されます。この数字は日本自動車工業会(JAMA)が隔年で実施している二輪車市場動向調査に由来し、調査対象は新車購入ユーザーに限られるなど、いくつかの前提を伴います。本稿では数字の出どころと前提を確認したうえで、免許区分や市場の変化、リターンライダーや若年層の動き、メーカー・業界側の対応を順に見ていきます。年度や集計方法によって数値には幅があるため、断定は避けながら整理します。


クリーム色の紙に鉛筆調で描いた、世代の異なる複数のライダーの後ろ姿とバイクのシルエット。若い世代から白髪の世代まで並んで立ち、遠くの道を見つめている中立的な情景。赤の差し色。読める文字や実在のロゴ、特定できる人物や国旗は描かない

「平均年齢56歳」はどこから来た数字か——調査の前提を確認する

ニュース記事やバイク量販店の売り場コメントに登場する「ライダーの平均年齢は50代半ば」という数字の出どころは、多くの場合、日本自動車工業会(JAMA)が隔年で実施している二輪車市場動向調査です。この調査は、国産4メーカーの新車購入ユーザー(2024年6月〜2025年5月に購入)と、輸入車の購入ユーザー(2022年6月〜2025年5月に新車または中古車を購入)を対象としたアンケートで、直近の2025年度調査は2025年8月29日から9月24日にかけて実施され、回答数は4164件、平均年齢は56.5歳という結果が公表されています。

ここで押さえておきたいのは、母集団が「この数年のあいだに車両を買った人」に絞られている点です(国産車は新車の購入者だけ、輸入車は中古車の購入者も含みます)。以前から所有していて対象期間には買い替えていない人、国産の中古車だけで乗り続けている人、原付を通勤・買い物用途に限って使う人などが、同じ比率で調査対象に含まれているとは限りません。つまり「56.5歳」という数字は、日本にいる二輪車ユーザー全体の年齢そのものではなく、購入という行動を取った層の平均という前提つきで読む必要があります。

推移をたどると——一本調子の右肩上がりではない

同じ調査をさかのぼると、平均年齢の上昇はここ数年で急に始まったわけではないことがわかります。ある報道の整理によれば、2001年度は38.5歳で、2005年度に40歳、2013年度には50歳を、それぞれ初めて超えたと伝えられています。その後も2017年度は52.7歳、2019年度は54.7歳と上昇が続きました。

ただし、毎回必ず前回より数値が高くなってきたわけでもありません。2021年度は54.2歳と、2019年度からやや下がっています。そこから2023年度は55.5歳、2025年度は56.5歳と、再び上昇に転じました。この上下の動きを踏まえると、20年以上の時間軸で見れば上昇基調にあるとしつつも、調査年ごとの振れ幅を持つ数字として受け止めるほうが、実態に近い読み方だといえそうです。

高齢化は何を意味するのか——需要・安全・市場の見え方

平均年齢が上がっていること自体は、二輪車という乗り物への需要が失われつつあるという意味ではありません。2023年度調査を排気量別に見ると、オンロードの251~400ccクラスの保有者は平均50.8歳と全体平均より若く、逆に40代から60代では男女とも原付一種のスクーターを保有する割合が高く、平均年齢がもっとも高いのもこのクラスだという結果が示されています。つまり「ライダー」全体をひとつの塊として語ると、車格や用途によってかなり違う年齢構成が均されてしまいます。

市場や社会環境への要望を見ると、任意保険料の低料金化を挙げた回答が48%と最も多く、二輪専用駐車場の整備拡大が46%、高速道路料金の低料金化が42%と続いたと報告されています。これらは特定の年齢層に限った要望というより購入者全体の関心として読める一方、任意保険は等級制度の性質上、免許取得から日が浅い層ほど負担が重くなりやすい仕組みでもあります。高齢化という切り口だけで語ると、費用面の課題が世代を超えて共有されている側面が見えにくくなるかもしれません。安全面についても、経験の蓄積と加齢に伴う身体機能の変化はどちらも指摘され得るものであり、どちらか一方だけを取り出して結論づけられるほど単純な話ではないでしょう。

免許区分と市場規模の変化——「原付」の中身も動いている

免許区分に目を向けると、市場の内側でも変化が進んでいます。2019年度調査では原付一種の保有・使用が大きく減少する一方、原付二種以上はわずかながら増加が見られたと報告されています。2023年度調査では大型二輪免許の保有率が前回調査より3ポイント増えて38%となり、趣味としてバイクに乗る層が一定の厚みを持ちつつあることをうかがわせます。

さらに区分そのものの変更も重なっています。2025年4月1日には、総排気量125cc以下で最高出力を4.0kW以下に制御した車両を原付免許で運転できる「新基準原付」の区分が導入されました。従来の総排気量50cc以下の原付一種は、排出ガス規制の適用により2025年10月31日をもって国内生産が終了し、11月以降は新基準原付と、それ以前に生産された50cc車が並んで存在する形になります。既存の50cc車がすぐに乗れなくなるわけではありませんが、これから新車として選べる「原付」の中身は、これまでとは違うものに置き換わりつつあります。

リターンライダーという流れ

平均年齢を押し上げている要因のひとつとして語られることが多いのが、一度バイクから離れていた人が時間を置いて戻ってくる、いわゆるリターンライダーの動きです。2023年度調査の分析では、一時中断後に再購入したユーザーの保有中断期間は、ロードモデルで約21年ともっとも長く、他の車種タイプでも約20年に及んだとされ、検討期間についても「半年以上前から」という回答が7割を占めたと報告されています。

同じ分析では、再購入にあたって以前より排気量を落とす、いわゆるダウンサイズの傾向も指摘されています。若い頃に大排気量車に乗っていた層が、体力や生活環境の変化に合わせて扱いやすい車格を選び直しているのだとすれば、これは市場からの離脱ではなく、時間差を伴った関わり方の変化と捉えることもできます。ただし、この動きがどの程度の規模で、今後どこまで続くのかは、公表されている調査結果だけでは判断しきれない部分が残ります。

若年層が入りにくい背景——費用・免許・置き場所

一方で、若い世代がバイクに入りにくくなっている背景も、同じ調査の別の側面から見えてきます。2019年度調査では、30代以下の構成比が6ポイント低下して12%となり、1ポイント増えた70代以上と並ぶ結果になったと報告されています。新規購入者に理由を尋ねた分析では「趣味として楽しみたい」「身軽に動ける」「行動範囲が広くなる」といった回答が上位に挙がっており、必要に迫られてというより、選択肢のひとつとして選ばれている様子がうかがえます。

それでも参入障壁が語られる理由は一つに絞りにくいものです。免許取得にかかる費用と時間、等級が低いうちは重くなりやすい任意保険料、都市部での駐輪場所の確保、可処分所得に占める維持費の割合など、複数の要因が重なっています。前章で触れた二輪専用駐車場整備への要望の高さも、こうした障壁の一端を裏づけていると読めます。どれか一つを解消すれば流れが変わる、と言い切れるほど単純な構図ではなさそうです。

まとめ——悲観にも楽観にも寄せすぎずに数字を読む

メーカーや業界団体の側でも、平均年齢の上昇を前提にした動きと、若年層に向けた動きが並行して進んでいます。新基準原付の導入や電動小型二輪の展開は、免許取得のハードルや車体の取り回しやすさに関わる変化であり、教習所が実施する体験教習や、免許なしでもバイクの操作感を試せるシミュレーター施設・オフロード体験施設といった取り組みは、購入以前の「触れる機会」を増やす方向の動きといえます。

平均年齢が上がっているという事実そのものを否定する材料は見当たりません。一方でその意味を「バイク離れが深刻化している」という悲観だけで語るのも、「リターンライダーが牽引する成熟市場」という楽観だけで語るのも、どちらも数字の一面しか見ていないおそれがあります。購入者という母集団の限定、排気量や用途によって異なる年齢構成、免許区分の変更が進行中であること——こうした前提を踏まえたうえで、今後の調査結果がどちらの方向に振れていくかを見ていく必要があります。

この記事は一般的な整理であり、将来の動向を予測・保証するものではありません

本文で紹介した平均年齢や構成比は、日本自動車工業会(JAMA)が隔年で実施している二輪車市場動向調査、およびこれを報じた記事にもとづいています。同調査は購入者を対象としたアンケート(国産車は新車購入者、輸入車は新車・中古車の購入者)であり、国産の中古車のみの購入者や既存保有者の実態を同じ比率で反映しているとは限りません。年度や集計方法によって数値には幅があるため、本文中の数字はあくまで参照時点の目安として捉えてください。

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